在留資格

就労ビザの申請に必要な費用や期間について考えてみました。

外国人の方が日本で働く場合には、原則、その目的にあった在留資格を取得する必要があります。

就労ビザは、外国人の方を雇用することになった企業にとってとても重要な意味を持っています。

なぜなら、
外国人の方を雇用したにも関わらず、在留資格の目的外の業務をさせた場合は不法就労として罰せらることになります。

また、以下のような疑問も持つのではないでしょうか?

・外国人の方を雇用する時にはどのような手続きが必要なのか?
・申請にかかる費用はどのくらい必要なのか?
・就労制限がない在留資格はあるのか?

そこで、今回は就労ビザ取得にかかる費用や、申請にかかる期間などについて考えていきたいと思います。

外国人の方の雇用を検討している方の参考になれば幸いです。

就労ビザについては以下の記事でも詳しく解説をしています。↓

就労ビザとは?


外国人を雇用したい企業から相談を受ける時によく、「就労ビザを取得したいのですが?」という問い合わせを頂きます。

厳密にいうと、就労ビザという在留資格は存在していません。

多くの企業が外国人を雇用する時に、必要になる在留資格は「技術・人文知識・国際業務」になります。

就労ビザというと、上記の「技術・人文知識・国際業務」以外にも「経営・管理」や「技能」なども就労ビザの範囲に入ってきます。

そのため、この記事での就労ビザは、企業からの相談が多い「技術・人文知識・国際業務」を念頭において書いていきます。

なお、就労ビザ等を規定する法律は「出入国管理及び難民認定法」が根拠法となっています。

就労ビザが必要な外国人の方と必要のない方は?


上述したとおり、外国人の方が日本で働くにはその目的にあった在留資格が必要になります。

その代表的な在留資格が「技術・人文知識・国際業務」になります。

実務上では「技人国(ギジンコク)」と略して呼ばれることもあります。

この「技術・人文知識・国際業務」の在留資格には、雇用理由書等を作成し、その外国人の方が、日本で働く条件を満たしていると判断された場合に認められ、その条件に適合した業務以外は原則的に行うことができません。

しかし、身分系の在留資格を取得している外国人の方の場合は、就労制限がありませんので、日本人と同様に働くことが可能になります。

就労制限のない外国人の方は?

就労制限のない外国人の方は、上述したとおり身分系の在留資格を取得している方になります。

具体的には以下の在留資格が該当します。

・永住権
・永住者の配偶者等
・日本人の配偶者等
・定住者

以下に上記4つの在留資格について簡単に説明をします。

永住権・永住者の配偶者等

永住権とは、一般的には日本に引き続き10年以上居住(就労系の在留資格で5年以上)し、生活基盤がしっかりしており、素行に問題等がなければ許可されます。
永住権を取得すれば、更新はありますが、在留期限がなくなります。

また、永住者の配偶者等については、一定の要件を満たした上述した永住者の妻などに認められるものです。

永住権については以下の記事で詳しく解説をしています。↓

日本人の配偶者等

代表的なケースは日本人と結婚した外国人の方が取得することになる在留資格です。
ただし、日本人と結婚したからといって必ずしも取得できるものではありませんので、注意が必要です。

在留資格「日本人の配偶者等」は、上述しているとおり就労制限がないため、偽装結婚によって取得するという悪質なケースがありますので、婚姻の実態等、厳しく審査がされます。

また、元日本人の方などが日本で生活したい場合は、「日本人の配偶者等」の在留資格を取得できます。

日本人の配偶者等の在留資格については以下の記事で詳しく解説をしています。↓

定住者

代表的なケースは、
外国人の方が日系3世の場合や、外国人の方が「定住者」、「日本人の配偶者等」又は「永住者の配偶者等」のいずれかの在留資格を持つ方の扶養を受けて生活する、未成年で未婚の実子である場合などが「定住者」の在留資格に該当します。

アルバイトで留学生を雇用する場合は?

留学生等をアルバイトで雇用する場合に、就労ビザが必要であるかどうか?という疑問ですが、この場合は「資格外活動の許可」を取得していれば一定の範囲内で就労ビザがなくてもアルバイトとして働くことが可能です。

この一定の範囲とは、週に28時間(学校が夏休み等の長期休暇の場合は、週40時間)までなら働くことができます。

ただし、風俗営業を行う業務については資格外活動の許可を持っていても働くことができませんので注意が必要です。

よくニュースでもあるように、「資格外活動の許可」を取得していたとしても、上記範囲を超えて外国人留学生を働かせていた場合は、当然使用者の責任も問われるので、必ず法令を遵守して雇用することが求められます。

就労制限のある外国人の方は?

上記の「永住権」などの在留資格以外で、外国人を正社員で雇用したいと思った場合は、就労制限がある就労ビザを申請し、外国人の方を雇用することになります。

上述したとおり、就労ビザという在留資格は存在せず、就労ビザの範囲に「技術・人文知識・国際業務」や「経営・管理」などの在留資格が含まれています。

多くの企業が外国人の方を正社員等で雇用する場合は、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を申請することになります。

在留資格「技術・人文知識・国際業務」を申請して、外国人の方を雇用するためには、大きく2つの条件のどちらかをクリアする必要があります。

10年以上の実務経験

外国人の方が従事しようとしている企業における役割いついて、10年以上の実務経験があることが必要になります。

ただし、通訳や語学講師等の場合は、実務経験は3年で良い場合もあります。

外国人の方の学歴

外国人の方が大学や専門学校を卒業し、その卒業した学校において履修していた内容に関連する業務に従事することが必要になります。

実務的には学歴が必要

上述したとおり、実務経験か学歴のいずれかの条件を満たすことが必要になりますが、実際は10年の実務経験を証明することが難しいことが多いので、学歴から「技術・人文知識・国際業務」の要件を満たすことが必要になります。

そのため、外国人の方なら誰でも在留資格「技術・人文知識・国際業務」で雇用できるということは不可能なので注意が必要です。

日本人の方が理系の大学を卒業後に、営業職等の職種で就職することはよくあることですが、外国人の方の場合はそのようなことは難しいので、採用担当者などは注意が必要です。

日本にいる外国人を雇用するケースと海外から呼び寄せるケースがある


外国人の方を就労ビザで雇用する場合、日本国内にいる外国人の方を雇用するケースと海外から呼び寄せるケースがあります。

日本国内の外国人を雇用する場合

日本国内の外国人の方を就労ビザで雇用するケースには、具体的には「留学生」を雇用するケースが考えられます。

このケースでは、「在留資格変更許可申請」となりますので、行政書士等の専門家に取次を依頼しない場合は、外国人留学生の方が出入国在留管理局に行き、変更申請をすることになります。

海外から外国人を呼び寄せる場合

日本国外に住んでいる外国人の方を呼び寄せる場合は、外国人本人が出入国在留管理局に申請をすることができないので、責任者である企業が申請することになります。

どちらのケースでも必要な書類は大きく変わりませんが、申請に必要となる代表的な書類は以下のようなものがあります。

・前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表
・外国人との間で締結する雇用契約書
・雇用する企業の登記事項証明書
・会社の概要がわかる会社案内
・直近年度の決算文書の写し

などが必要になります。

ただし、「変更許可申請」と「在留資格認定書交付申請」とでは、手続きの種類が違うので注意が必要です。

就労ビザを取得するまでにはどのくらいの期間が必要?


就労ビザを申請して、許可・不許可の決定がなされる標準処理期間は1ヵ月〜3ヵ月とされています。

ただし、標準処理期間とは、あくまでも目安の期間ですので、この期間より早く許可・不許可がでることもあれば、遅くでることもあります。

就労ビザの許可が降りなければ、雇用したい外国人の方を働かせることができないので、上記期間がかかるということを前提で、余裕を持って申請をすることを忘れてはいけません。

また、多くの外国人留学生が就労ビザに新卒で就職等の時期(1月〜3月)は、「留学」から「技術・人文知識・国際業務」への変更申請等が多くなりますので、時期によっては中々、結果がでないこともありますので、そのような事情があるということも知っておくと良いです。

在留資格の申請に関する業務は、「申請取次」を持っている行政書士等が専門にしているので、わからないことがあれば相談をして、早め早めの対策をすることもオススメです。

在留期間の1年、3年、5年の違いは?


「技術・人文知識・国際業務」や「経営・管理」などの就労ビザには、在留期限が存在しています。

永住権などを取得しない限り、外国人の方は在留期限が終わる前に、必ず在留期間の更新を行う必要があります。

この在留期間の更新をしないまま日本に滞在してしまうと、「不法滞在(オーバーステイ)」として退去強制の対象になってしまいますので、必ず更新を行うようにしなければなりません。

この在留期限には、一般的に「1年」「3年」「5年」といった期限が与えられます。

雇用する企業にとっては、当然長く働いて欲しいと思っているので、在留期限を長くして欲しいと考えます。

通常、就労ビザでは最初の在留資格の申請では、「1年」が与えられることが一般的です。

在留期限が1年であっても、適切に日本に滞在し、何度が更新をすることによって、信用してもらえるようになれば「3年」や「5年」の在留期限をもらえるようになります。

また、就労ビザを申請するにあたり、企業規模によって「カテゴリー1」〜「カテゴリー4」に分類されています。

企業規模が大きい「カテゴリー1(上場会社等)」や「カテゴリー2(直近年度の給与所得の源泉徴収額が1,500万円以上)」などの企業が、就労ビザを申請した場合は、最初から「3年」の在留資格を与えられることもあります。

つまり、長い在留期限を与えられるためには、外国人の方自身の信用と雇用する企業の信用が高くなれば、長期の在留期限が与えられるようになると考えられます。

就労ビザの取得にかかる費用は?

就労ビザを申請を検討している場合は、外国人の方本人(雇用する企業)自身で行うか、行政書士に依頼する方法が考えられます。

以下で、外国人の方本人(雇用する企業)自身で行う場合と、行政書士に依頼した場合の費用について考えていきます。

外国人本人(雇用する企業)自身で行う場合にかかる費用

就労ビザは、新規で申請する時には、出入国在留管理局に支払う手数料はありません。

しかし、申請の際に、「在留資格認定証明書」を郵送してもらうために、返信用封筒と切手代(404円分の切手(簡易書留用)を貼付したもの)が必要になります。

また、在留資格の変更や更新の申請の時には、4,000円の手数料が必要になりますので、注意が必要です。

つまり、行政書士に依頼しないで自身で就労ビザの申請を行なった場合は、以下の費用が必要になります。

在留資格認定証明書交付申請にかかる費用

・切手代(404円)
・出入国在留管理局までの交通費
・在留資格認定交付申請書に添付する証明写真の撮影費用(600円〜2,000円程度)
・卒業証明書等の学歴等を証明する文書の発行費用(300円〜1,000円)

つまり、合計で5,000円程度の費用が必要になると考えることができます。

在留資格認定証明書交付申請については、以下の記事でも詳しく解説をしています。↓

在留資格変更許可申請にかかる費用

・出入国在留管理局までの交通費
・在留資格認定交付申請書に添付する証明写真の撮影費用(600円〜2,000円程度)
・卒業証明書等の学歴等を証明する文書の発行費用(300円〜1,000円)
・就職する会社の登記事項証明書(600円)
・許可後の収入印紙代(4,000円)

上記金額が必要になるので合計は10,000円以内で収まると考えることができます。

なお、変更申請の場合は、新規申請とは異なり、切手や封筒は不要です。

行政書士に就労ビザの申請を依頼した場合の費用の相場は?

就労ビザの申請を行い、在留資格を取得するためには様々な条件をクリアする必要があります。

そもそも外国人の方を雇用することができるのか?といった疑問等も、行政書士等の法務の専門家に依頼することによって、安心して手続きを進めていくことができるようになります。

そこで、行政書士事務所では、以下のようなプランで業務の委任を受けている事務所があります。

書類のチェックのみ

書類の収集や作成は自身で行い、完成した書類の内容等のチェックのみの依頼を受けている事務所も存在しています。

しかし、書類のチェックだけでは、正確な判断は難しいので、多くの行政書士事務所では、書類のチェックのみの業務を行なっていないのが現状です。

書類のチェックのみの費用の相場は、20,000円〜30,000円程度となっています。

書類の収集・作成のみの代行

行政書士事務所の中には、書類の収集と作成のみを代行し、申請は依頼者本人に行ってもらうというやりかたで業務を進めている事務所もあります。

こちらは、出入国在留管理局には申請者自身が行くため、費用は通常の料金よりも安くなっていることが多いです。

・新規および変更申請の費用:80,000円〜100,000円程度
・更新申請の場合の費用:25,000円〜60,000円程度

上記金額が相場になっていると考えられます。

相談から書類作成・収集・申請まで一括代行

就労ビザの申請において、そもそも、就労予定の外国人の方が、本当にその業務で働くことができるのかということがとても重要なポイントになります。

そのため、多くの行政書士事務所では、相談から書類の作成・収集までサポートし、申請取次として、出入国在留管理局への申請まで一括でサポートしています。

就労ビザの申請まで一括でサポートする場合の費用:100,000円〜200,000円
更新申請費用:40,000円〜80,000円程度

が相場になっています。

日本行政書士連合会から発表されている行政書士費用の統計


日本行政書士会連合会から発表されている在留資格に関する報酬額の統計からも、行政書士の費用の相場について考えていきたいと思います。

在留資格認定証明書交付申請(就労系)

在留資格認定証明書交付申請の報酬額の割合は以下のようになっています。

①10万円~12.5万円未満(39.1%)
②7.5万円~10万円未満(14.7%)
③15万円~20万円未満(13.6%)
④12.5万円~15万円未満(9.2%)

概ね平均費用は15万円前後になるのではないでしょうか。
また、20万円以上のケースも6.3%あることから、難易度によって費用が増減することも想定されます。


<参照:日本行政書士会連合会 報酬額の統計より一部抜粋

在留資格変更許可申請(就労系)

①10万円~12.5万円(28.1%)
②5万円~7.5万円(24.8%)
③7.5万円~10万円(18.8%)
④5万円未満(13.1%)

概ね平均費用は7.5万円程度になるのではないでしょうか。
また、こちらも20万円以上が5.6%あることから難易度によって費用が増減することが想定されます。

<参照:日本行政書士会連合会 報酬額の統計より一部抜粋>

行政書士事務所によって就労ビザ申請の費用が異なるのは何故?

就労ビザの申請を受けている行政書士事務所では、何故、費用の差が生まれているのでしょうか?

そもそも、行政書士業務の報酬は、各事務所で自由に決定できるようになったことが影響しています。

そして、最近では、破格の安い値段で業務を受任しようとしている行政書士事務所も見受けられますが、在留資格に関する申請は経験がとても大事になります。

そのため、必ず実際に話を聞いた上で、本当に信頼できる事務所なのかということを判断することも必要です。

理由としては、在留資格専門と看板を出していても、実際はほとんど経験がない事務所も最近は多く見受けられるようになってきているからです。

また、以下のようなポイントも当たり前のようですが、出来ていない事務所も多く存在しています。

・自宅事務所ではなく、オフィスで事務所を構えていること。
・個人事業ではなく、法人として行政書士事務所を運営していること。
・ホームページがしっかりとしていること。
・電話番号が固定電話で設置されていること。
・メールアドレスがgmail.comのようなフリーアドレスではないこと。

など、信頼を本当にできるのか?ということをしっかりと意識して選択することができれば、行政書士事務所選びに失敗する可能性は低くなります。

行政書士事務所には費用をどのタイミングで支払うの?


行政書士事務所に就労ビザの申請を依頼する場合は、上記のように費用が当然発生します。

しかし、ここで気になることは、費用をどのタイミングで支払うことになるのか?ということではないでしょうか。

実務上は大きく3つのパターンに分かれていることが多いです。

事前に費用の前払い

このパターンの場合は、依頼の段階で報酬を全額支払うパターンです。

事前に着手金を支払い、残額を許可取得後に支払う

数万円の着手金を事前に支払い、許可取得ができた段階で、残りの残額を支払うパターンです。

完全成功報酬

このパターンは、依頼の段階では費用を取らず、許可が降りてから全額を支払うというパターンです。

行政書士事務所によって報酬の支払い方が違い、概ね上記3つのパターンに分かれていることが多いので、報酬の支払い方なども事前に確認をしておけば、安心して依頼をすることができます。

申請取次の資格を持ってい行政書士に依頼すること


出入国在留管理局に対して申請者の代わりに、書類を提出するためには、行政書士の中でも、研修を受けて申請取次の資格を持った行政書士しか行うことができません。

在留資格関連の業務を行なっている行政書士事務所では、ほとんどの行政書士が持っていると思いますが、念のために確認しておくことをオススメします。

申請取次を持っていないと、申請者本人が申請に行く必要が出てきますので、注意が必要です。

まとめ


今回は、就労ビザの申請にかかる期間や費用について考えてきました。

多くの外国人の方が日本で働く時代になりました。

そのような、時代の中で外国人の方の雇用を検討している方は、一度専門家である行政書士に相談することもオススメです

今回の記事が皆様の参考になれば幸いです。

以下の記事も良く読まれていますので参考にしてください。↓

動画でも在留資格について解説しています。↓

関連記事

最近の記事

  1. 建設業許可申請にかかる費用について考えてみました。

  2. 建設業(特定技能)の受入計画について解説

  3. 建設業の専任技術者を変更する時の手続きについて解説

  4. 建設業許可を取得する際に定款で注意すべきこと

  5. 特区民泊の許可に必要な消防法令適合通知書について