介護業界の深刻な人手不足を解消するために、2019年に創設された在留資格「特定技能」。なかでも「特定技能1号(介護)」は、即戦力となる外国人介護人材を受け入れることができる制度として注目されています。
2025年4月からは訪問介護などの訪問系サービスも対象となり、活用の幅がさらに広がりました。
しかし、特定技能「介護」の申請は複雑で、以下のような疑問をお持ちの介護事業者様も多いのではないでしょうか。
- ✓ 特定技能「介護」と技能実習の違いは?
- ✓ どんな要件を満たせば受け入れられる?
- ✓ 協議会への加入はいつまでに必要?
- ✓ 登録支援機関に委託すべき?
- ✓ 申請にはどんな書類が必要?
この記事では、入国管理局への申請を専門とする行政書士が、特定技能「介護」の要件から申請手続き、受入れ後の注意点までをわかりやすく解説します。
【この記事でわかること】
- 特定技能「介護」の基本制度と2025年最新情報
- 取得要件と試験内容の詳細
- 受入れ事業所の要件と人数制限
- 申請に必要な書類一覧
- 技能実習・在留資格「介護」との比較
- 協議会加入と登録支援機関の活用方法
目次
第1章:特定技能「介護」とは【基礎知識】
1-1. 特定技能制度の概要
在留資格「特定技能」は、深刻化する人手不足に対応するため、生産性向上や国内人材の確保のための取組を行ってもなお人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野において、一定の専門性・技能を有する外国人材を受け入れる制度として、2019年4月1日に施行されました。
特定技能には「1号」と「2号」があり、介護分野は特定技能1号の対象分野の一つです。
特定技能1号とは
特定産業分野に属する相当程度の知識または経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格です。
- 在留期間:1年、6か月または4か月ごとの更新、通算で上限5年まで
- 技能水準:試験等で確認(技能実習2号を修了した外国人は試験等免除)
- 日本語能力水準:生活や業務に必要な日本語能力を試験等で確認(技能実習2号を修了した外国人は試験等免除)
- 家族の帯同:基本的に認められない
- 受入れ機関または登録支援機関による支援:対象
1-2. 特定技能「介護」で従事できる業務内容
特定技能「介護」の在留資格で雇用した外国人が従事することができる業務は、身体介護等(利用者の心身の状況に応じた入浴、食事、排せつの介助等)のほか、これに付随する支援業務(レクリエーションの実施、機能訓練の補助等)です。
⚠️ 重要な注意点
従来、訪問介護等の訪問系サービスにおける業務は対象外でしたが、2025年4月から条件付きで解禁されました。詳しくは次の項目で解説します。
1-3. 【2025年最新】訪問介護解禁の詳細
2025年4月より、訪問系サービスも特定技能の対象となりました。具体的には、以下のサービスが対象です。
対象となる訪問系サービス
- 訪問介護
- 訪問入浴介護
- 夜間対応型訪問介護
- 介護予防訪問入浴介護
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
- 訪問型サービス(総合事業)
訪問系サービスに従事するための追加要件
通常の特定技能「介護」の要件に加えて、以下の要件を満たすことが必要です。
- 介護職員初任者研修課程などを修了していること
- 介護事業所などでの実務経験等を有すること
※ 介護事業所等での実務経験が1年以上あることを原則とする
受入れ事業所の遵守事項(訪問系サービスの場合)
受入れ事業所は、利用者・家族へ事前に説明を行うとともに、以下の事項を遵守する必要があります。
- 外国人介護人材に対し、訪問介護等の業務の基本事項などに関する研修を行うこと
- 外国人介護人材が訪問介護などの業務に従事する際、一定期間、責任者などが同行するなどにより必要な訓練を行うこと
- 外国人介護人材に対し、訪問介護などにおける業務の内容などについて丁寧に説明を行いその意向などを確認しつつ、キャリアアップ計画を作成すること
- ハラスメント防止のために相談窓口の設置などの必要な措置を講ずること
- 外国人介護人材が訪問介護などの業務に従事する現場において不測の事態が発生した場合などに適切な対応を行うことができるよう、情報通信技術の活用を含めた必要な環境整備を行うこと
参考:厚生労働省「外国人介護人材の訪問系サービスへの従事について」
1-4. 在留期間と家族帯同について
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 在留期間 | 1年、6か月または4か月ごとの更新 通算で上限5年まで |
| 家族の帯同 | 基本的に認められない (特定技能1号の場合) |
| 転職 | 同じ分野内であれば可能 (介護分野から他の分野への転職は不可) |
| 永続的な在留 | 5年の期限後、介護福祉士を取得すれば 在留資格「介護」へ移行可能 |
1-5. 雇用形態と労働条件の要件
特定技能外国人の雇用形態は、「直接雇用」に限られています。派遣等の雇用形態は認められませんので、注意が必要です。
労働条件の重要ポイント
- 報酬額が日本人と同等以上であること
- 労働時間等が日本人と同等であること
- 外国人であることを理由として、差別的な扱いをしないこと
第2章:特定技能「介護」の取得方法【4つのルート】
外国人が特定技能「介護」を取得するためには、主に4つのルートがあります。
特定技能「介護」取得の4つのルート
- ルート①:介護技能評価試験に合格する
- ルート②:技能実習2号から移行する【最多ルート】
- ルート③:介護福祉士養成施設を修了する
- ルート④:EPA介護福祉士候補者として4年間従事
2-1. ルート①:介護技能評価試験に合格する
特定技能「介護」の在留資格を取得するための試験は、3つの試験に合格する必要があります。
必要な3つの試験
- 介護技能評価試験
- 介護日本語評価試験
- 日本語能力試験(JLPT)N4以上、または国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)で200点以上
①介護技能評価試験とは
介護技能評価試験は、介護業務に従事するための専門的な知識と技能を測る試験です。
| 試験方式 | CBT方式(コンピューター・ベースド・テスティング) |
|---|---|
| 試験時間 | 60分 |
| 問題数 | 45問(学科試験のみ、実技試験なし) |
| 合格基準 | 60点以上(100点満点) |
| 試験言語 | 現地語(インドネシア語、ネパール語、フィリピン語など) 問題文は日本語 |
| 試験内容 | 介護の基本、こころとからだのしくみ、 コミュニケーション技術、生活支援技術 |
②介護日本語評価試験とは
介護日本語評価試験は、介護現場で必要な日本語能力を測る試験です。通常の日本語試験とは別に、この試験にも合格する必要があります。
| 試験方式 | CBT方式 |
|---|---|
| 試験時間 | 30分 |
| 問題数 | 15問 |
| 合格基準 | 60点以上(100点満点) |
| 試験内容 | 介護のことば、介護の会話・声かけ、 介護の文書 |
💡 試験の難易度と合格率
介護技能評価試験の合格率は約50~60%程度です。介護の専門知識が問われるため、事前の学習が重要です。多くの送り出し機関や日本語学校では、試験対策講座を実施しています。
2-2. ルート②:技能実習2号から移行する【最多ルート】
実務上、最も多いのがこのルートです。介護分野の技能実習2号を良好に修了した外国人は、特定技能「介護」へ移行することができます。
技能実習2号「良好修了」の条件
以下のいずれかの条件を満たしている場合、技能実習を「良好に修了」したとみなされます。
- 「介護職種・介護作業」の技能実習2号を2年10か月以上修了していること
- 以下のいずれかを満たしていること
- 介護技能実習評価試験(専門級)の実技試験に合格している
- 技能実習生に関する評価調書がある
試験の免除について
技能実習2号を良好に修了した場合、以下の試験が免除されます。
- ✓ 介護技能評価試験 → 免除
- ✓ 日本語能力試験(N4以上)またはJFT-Basic → 免除
- ✗ 介護日本語評価試験 → 介護の技能実習以外を修了している場合は免除されない
(介護の技能実習以外を修了している場合は免除されない。)
⚠️ 重要な注意点
技能実習2号から移行する場合でも、介護日本語評価試験は免除されません。必ず受験して合格する必要があります。
2-3. ルート③:介護福祉士養成施設を修了する
日本の介護福祉士養成施設を修了した外国人は、試験を受けることなく特定技能「介護」を取得できます。
介護福祉士養成課程において、介護分野における一定の専門性と技術、知識を持っていることや、日本語能力をすでに備えているとみなされるためです。
💡 ポイント
ただし、介護福祉士養成施設を修了している場合、通常は在留資格「介護」の取得を目指すことが一般的です。在留資格「介護」は在留期間の制限がなく、家族の帯同も可能なため、特定技能よりもメリットが大きいためです。
2-4. ルート④:EPA介護福祉士候補者として4年間従事
EPA(経済連携協定)介護福祉士候補者として4年間、就労・研修に適切に従事した外国人も、特定技能「介護」への移行が可能です。
「適切に従事」の条件
直近の介護福祉士国家試験の結果通知書により、以下の条件を満たしていることが必要です。
- 合格基準点の5割以上の得点があること
- すべての試験科目に得点があること
参考:厚生労働省「介護分野における特定技能外国人の受け入れについて」
第3章:受入れ事業所が満たすべき要件
特定技能「介護」の外国人を雇用するには、受入れ事業所側が満たすべき条件があります。
3-1. 対象となる介護施設・事業所一覧
特定技能「介護」で受け入れ対象となる施設・事業所は、以下のとおりです。
1. 児童福祉法関係の施設・事業
- 障害児入所施設
- 児童発達支援
- 放課後等デイサービス など
2. 障害者総合支援法関係の施設・事業
- 障害者支援施設
- 共同生活援助(グループホーム)
- 短期入所
- 生活介護
- 自立訓練 など
3. 老人福祉法・介護保険法関係の施設・事業
- 特別養護老人ホーム
- 介護老人保健施設
- 介護医療院
- 軽費老人ホーム
- 有料老人ホーム
- 通所介護(デイサービス)
- 短期入所生活介護(ショートステイ)
- 小規模多機能型居宅介護
- 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
- 訪問介護(2025年4月~)
- 訪問入浴介護(2025年4月~) など
4. 生活保護法関係の施設
- 救護施設
- 更生施設 など
5. その他の社会福祉施設等
- 地域活動支援センター
- 福祉ホーム など
6. 病院または診療所
- 介護療養型医療施設 など
詳細は厚生労働省「対象施設一覧」(PDF)をご確認ください。
3-2. 受入れ人数の上限(常勤職員数まで)
特定技能「介護」の外国人は、何人でも雇用できるわけではありません。受入れ人数には上限があります。
⚠️ 受入れ人数の上限
事業所で受け入れることができる特定技能1号外国人は、事業所単位で、日本人等の常勤介護職員(雇用保険被保険者)の総数を上限とされています。
カウント対象となる「日本人等」の範囲
「日本人等」には、以下の外国人も含まれます。
- 在留資格「介護」で働く外国人
- 永住者
- 日本人の配偶者等
- 永住者の配偶者等
- 定住者
【計算例】
常勤の介護職員が10人いる事業所の場合
- 日本人職員:7人
- 在留資格「介護」の外国人:1人
- 永住者の外国人:2人
- 合計:10人
→ 特定技能外国人は最大10人まで受け入れ可能
3-3. 介護分野特定技能協議会への加入【必須】
特定技能「介護」の申請にあたり、介護分野の特定技能協議会に加入することが必須条件の1つになっています。
2024年6月15日以降の重要な変更点
⚠️ 申請前の加入が必須に
以前は入国管理局に申請後に加入することも認められていましたが、2024年6月15日以降の申請については、申請前に協議会に加入し、構成員であることの証明書を提出することが必須となりました。
協議会加入の手続き方法
介護分野における特定技能協議会への加入は、国際厚生事業団(JICWELS)が窓口となっています。
加入の流れ
- 国際厚生事業団のウェブサイトから「構成員加入申出書」をダウンロード
- 必要事項を記入し、メールまたは郵送で提出
- 審査後、「構成員証明書」が発行される
- 構成員証明書を入管への申請書類に添付
介護分野における特定技能協議会については、以下の記事でも解説をしています。
3-4. 1号特定技能外国人支援計画の作成
特定技能外国人を受け入れる事業所は、1号特定技能外国人支援計画を作成し、計画に基づいた支援を行う義務があります。
義務的支援の10項目
- 事前ガイダンス
- 出入国する際の送迎
- 住居確保・生活に必要な契約支援
- 生活オリエンテーション
- 公的手続き等への同行
- 日本語学習の機会の提供
- 相談・苦情への対応
- 日本人との交流促進
- 転職支援(自己都合退職以外)
- 定期的な面談・行政機関への通報
3-5. 登録支援機関への委託を検討すべきケース
上記の支援計画の作成・実施は、事業所にとって大きな負担となる場合があります。そのような場合、登録支援機関に支援業務を委託することが認められています。
登録支援機関への委託がおすすめのケース
- 外国人の母語で対応できる職員がいない
- 初めて特定技能外国人を受け入れる
- 支援業務に専任できる職員がいない
- 複数の外国人を受け入れる予定がある
登録支援機関については、第7章で詳しく解説します。
第4章:特定技能「介護」の申請手続き【行政書士が解説】
ここからは、実際の申請手続きについて、行政書士の視点から詳しく解説します。
4-1. 申請の流れ(在留資格認定証明書交付申請)
海外から外国人を呼び寄せる場合、在留資格認定証明書交付申請を行います。
申請から入国までの流れ
- 雇用契約の締結 → 特定技能雇用契約書の作成・締結
- 協議会への加入 → 介護分野特定技能協議会への加入申出、構成員証明書の取得
- 支援計画の作成 → 1号特定技能外国人支援計画書の作成、登録支援機関への委託契約(委託する場合)
- 申請書類の準備 → 必要書類の収集・作成
- 地方出入国在留管理局へ申請 → 在留資格認定証明書交付申請
- 審査 → 標準処理期間:1~3か月程度
- 在留資格認定証明書の交付 → 許可の場合、証明書が交付される
- ビザ申請 → 外国人が現地の日本大使館・領事館でビザ申請
- 入国 → 日本入国後、在留カードの交付
4-2. 必要書類一覧
特定技能「介護」の申請に必要な書類は多岐にわたります。ここでは、在留資格認定証明書交付申請を想定して主要書類を解説します。
在留資格認定証明書交付申請書については以下の記事でも解説をしています。
【A】特定技能外国人に関する必要書類
- 在留資格認定証明書交付申請書
- 特定技能雇用契約書の写し
- 雇用条件書の写し
- 特定技能外国人の報酬に関する説明書
- 1号特定技能外国人支援計画書
- 登録支援機関との支援委託契約に関する説明書(委託する場合)
- 健康診断個人票
- その他必要書類
【B】受入れ企業(事業所)に関する必要書類
- 特定技能所属機関概要書
- 法人登記事項証明書
- 労働保険料等納付証明書(未納なし証明)
- 社会保険料納入状況回答票
- 税務署発行の納税証明書(その3)
- 法人住民税の市町村発行の納税証明書
- 介護分野特定技能協議会の構成員証明書
【C】試験合格または技能実習修了を証明する書類
申請人の取得ルートによって、以下のいずれかの書類が必要です。
- 試験合格者の場合:介護技能評価試験、介護日本語評価試験、日本語能力試験(N4以上)の合格証明書
- 技能実習2号修了者の場合:技能実習評価試験の合格証明書または評価調書、介護日本語評価試験の合格証明書
- 介護福祉士養成施設修了者の場合:卒業証明書
- EPA候補者の場合:介護福祉士国家試験の結果通知書
4-3. 申請時の注意点
①外国人が理解できる言語での契約書作成
介護技能評価試験に合格した外国人の特定技能ビザの申請は、その外国人の方が理解できる言語で作成しなければならない書類があります。(例:特定技能雇用契約書、雇用条件書等)
そのため、その言語に対応できる人材が社内にいないと雇用条件の説明等が難しくなります。このような場合は、登録支援機関に支援業務を委託することで、説明等を委託することができます。
③登録支援機関への委託と行政書士への依頼の違い
登録支援機関に支援業務を委託したからといって、入国管理局への在留資格の申請の取次等を委託することはできません。
入国管理局に対する書類の作成等の独占業務は行政書士です。申請手続きを専門家に依頼したい場合は、別途、行政書士に依頼する必要があります。
4-4. 審査期間の目安
在留資格認定証明書交付申請の標準処理期間は、1~3か月程度です。ただし、書類に不備がある場合や、追加資料の提出を求められた場合は、さらに時間がかかることがあります。
💡 スムーズな審査のためのポイント
- 書類は漏れなく、正確に準備する
- 協議会への加入は早めに行う
- 雇用契約書や支援計画書は、外国人が理解できる言語で作成する
- 不明な点は事前に入管や行政書士に相談する
第5章:特定技能「介護」と他の在留資格との比較
介護分野で外国人を雇用する場合、特定技能「介護」以外にも以下の在留資格があります。
- 在留資格「介護」
- 技能実習「介護」(2027年廃止予定→育成就労へ移行)
- EPA介護福祉士候補者(特定活動)
それぞれの特徴を理解し、自社に最適な制度を選択することが重要です。
5-1. 4つの制度の比較表
| 項目 | 特定技能「介護」 | 在留資格「介護」 | 技能実習「介護」 | EPA |
|---|---|---|---|---|
| 在留期間 | 最長5年 | 更新制限なし | 最長5年 | 原則4年 (資格取得後は制限なし) |
| 訪問介護 | 2025年4月~可能 (条件付) |
可能 | 不可 | 資格取得後は一部可能 |
| 人員配置基準 | 配属後すぐ算入可 | すぐに算入可 | 配属後6か月後 | 講習期間後 |
| 夜勤 | 1人体制可能 | 可能 | 2年目以降、複数体制 | 可能 |
| 転職 | 可能 (同じ分野内) |
可能 | 原則不可 | 可能(資格取得後) |
| 家族帯同 | 不可(1号の場合) | 可能 | 不可 | 不可(資格取得後は可能) |
| 取得要件 | 試験合格or 技能実習修了 |
介護福祉士資格必須 | 学歴・資格不問 | 看護系学校卒業等 |
| こんな事業所におすすめ | ・すぐに戦力が欲しい ・初めて外国人を受入れる ・訪問介護も検討している |
・長期的に雇用したい ・養成校と連携できる ・訪問介護が主 |
・じっくり育成したい ・転職リスクを避けたい ・監理団体と連携できる |
・質の高い人材が欲しい ・対象3か国からの採用希望 ・国の支援を受けたい |
第6章:特定技能「介護」のメリット・デメリット
特定技能「介護」の制度を活用するにあたって、メリットとデメリットを正しく理解しておくことが重要です。
6-1. 受入れ事業所のメリット
✓ メリット1:配属後すぐに人員配置基準に算入可能
特定技能外国人は、施設に配属後すぐに人員配置基準に加えることができます。技能実習の場合は配属後6か月間は算入できないため、これは大きなメリットです。
✓ メリット2:1人体制での夜勤が可能
制度上、最初から1人体制での夜勤が可能です。日本人と同じような勤務形態で働いてもらうことができます。
✓ メリット3:即戦力となる人材を確保できる
試験に合格しているか、技能実習を修了しているため、介護の基礎知識と技能を持っていると言えます。入国後の講習期間も数時間程度と短く、すぐに現場に配属できます。
✓ メリット4:技能実習より受入れ要件が緩い
技能実習の場合、開設後3年以上の事業所であることや、技能実習指導員の配置などの要件がありますが、特定技能にはこのような要件がありません。新設の事業所でも受け入れ可能です。
✓ メリット5:2025年4月から訪問介護も可能に
条件を満たせば、訪問介護などの訪問系サービスにも従事してもらうことができるようになりました。活用の幅が広がっています。
6-2. 受入れ事業所のデメリット
✗ デメリット1:転職リスクがある
特定技能外国人は、同じ分野内であれば自由に転職できます。技能実習のように転籍制限がないため、待遇や職場環境が悪いと、他の事業所に転職してしまうリスクがあります。
✗ デメリット2:支援計画の作成・実施義務がある
特定技能外国人に対する10項目の義務的支援を行う必要があります。自社で対応できない場合は、登録支援機関に委託することになり、月額2~3万円程度の費用がかかります。
✗ デメリット3:在留期間が最長5年
特定技能1号の在留期間は通算5年までです。5年を超えて日本で働いてもらいたい場合は、外国人に介護福祉士を取得してもらい、在留資格「介護」に移行する必要があります。
第7章:登録支援機関の活用方法
特定技能外国人を受け入れる際、登録支援機関の活用を検討することが重要です。
7-1. 登録支援機関とは
登録支援機関とは、特定技能外国人を受け入れる事業所に代わって、1号特定技能外国人支援計画に基づく支援業務を行う機関です。
出入国在留管理庁に登録された機関であり、支援業務の全部または一部を委託することができます。
登録支援機関については以下の記事でも解説をしています。
7-2. 委託できる支援業務(10項目)
登録支援機関に委託できる支援業務は、以下の10項目です。
- 事前ガイダンス
- 出入国する際の送迎
- 住居確保・生活に必要な契約支援
- 生活オリエンテーション
- 公的手続き等への同行
- 日本語学習の機会の提供
- 相談・苦情への対応
- 日本人との交流促進
- 転職支援(自己都合退職以外)
- 定期的な面談・行政機関への通報
これらの支援をすべて委託することも、一部のみを委託することも可能です。
7-3. 費用相場と委託のメリット
登録支援機関への委託費用相場
| 項目 | 費用相場 |
|---|---|
| 月額支援費用 | 2~3万円/人 |
| 初期費用 | 0~10万円程度 (事前ガイダンス、入国時送迎等) |
| 人材紹介費用 (紹介も依頼する場合) |
30~50万円程度/人 |
※人材紹介と登録支援をセットで提供している機関も多くあります。
登録支援機関に委託するメリット
- 専門的なサポートが受けられる
- 外国人の母語での対応が可能
- 事業所の負担を大幅に軽減できる
- 法令遵守が確実になる(支援義務違反のリスク回避)
- 外国人の定着率が向上する(きめ細かいサポート)
- 入管への定期報告もサポートしてもらえる
第8章:特定技能「介護」から在留資格「介護」への移行
特定技能「介護」の在留期間は最長5年ですが、介護福祉士を取得すれば、在留資格「介護」に移行し、永続的に日本で働くことができます。
8-1. 介護福祉士資格取得による永続的就労
在留資格「介護」は、介護福祉士の国家資格を持つ外国人が取得できる在留資格で、以下のメリットがあります。
在留資格「介護」のメリット
- 在留期間の制限なし(更新を続ける限り永続的に在留可能)
- 家族の帯同が可能(配偶者・子)
- 訪問介護などの訪問系サービスにも従事可能
- 業務の制限がない
- 転職も自由
特定技能外国人に介護福祉士を取得してもらうことで、長期的に雇用することができ、事業所にとっても大きなメリットとなります。
8-2. 実務経験3年+介護福祉士試験合格のルート
介護福祉士の国家資格を取得するには、実務経験ルートが一般的です。
介護福祉士取得までの流れ
- 実務経験3年以上
- 介護等の業務に従事した期間が3年(1,095日)以上
- 従事日数が540日以上
- 実務者研修の修了
- 450時間の研修を受講・修了
- 介護福祉士国家試験の受験・合格
- 筆記試験(125問)
- 介護福祉士の登録
- 在留資格「介護」への変更許可申請
8-3. 事業所がサポートできること
特定技能外国人に介護福祉士を取得してもらうために、事業所ができるサポートは以下のとおりです。
事業所ができるサポート
1. 実務者研修の受講支援
- 受講費用の補助または全額負担(相場:10~15万円)
- 勤務シフトの調整(研修受講のための時間確保)
2. 国家試験対策の支援
- 試験対策講座の費用補助
- 勉強時間の確保(勤務時間の調整)
- 日本人職員による学習サポート
- 過去問題集や参考書の提供
3. モチベーション維持の支援
- 資格取得後の処遇改善の明確化(給与アップ等)
- 在留資格「介護」への移行サポートの約束
- 長期雇用の意思表示
- 合格時の報奨金制度
第9章:よくある質問(FAQ)
特定技能「介護」に関して、よくいただく質問をまとめました。
Q1. 特定技能と技能実習の違いは?
A. 主な違いは以下のとおりです。
- 目的:特定技能は人手不足対応、技能実習は国際貢献(技能移転)
- 人員配置基準:特定技能は配属後すぐに算入可、技能実習は6か月後
- 夜勤:特定技能は1人体制可、技能実習は2年目以降複数体制
- 転職:特定技能は可能、技能実習は原則不可
- 訪問介護:特定技能は2025年4月~可能(条件付)、技能実習は不可
Q2. 訪問介護で働いてもらえますか?
A. 2025年4月から条件付きで可能になりました。
以下の要件を満たす必要があります。
- 介護職員初任者研修課程などを修了していること
- 介護事業所などでの実務経験が1年以上あること
Q3. 受入れ人数に制限はありますか?
A. はい、あります。事業所単位で、日本人等の常勤介護職員(雇用保険被保険者)の総数までが上限です。
Q4. 協議会への加入はいつまでに必要?
A. 2024年6月15日以降の申請については、申請前に加入することが必須です。申請時に構成員証明書の提出が必要です。
Q5. 登録支援機関への委託は必須ですか?
A. 必須ではありません。自社で支援体制を整えることができれば、登録支援機関に委託する必要はありません。
ただし、外国人の母語で対応できる職員がいない、初めて特定技能外国人を受け入れる場合などは委託を検討することをおすすめします。
Q6. 申請から許可までどのくらいかかりますか?
A. 在留資格認定証明書交付申請の標準処理期間は1~3か月程度です。協議会への加入など、事前準備を含めると、合計で3~6か月程度を見込んでおくと良いでしょう。
Q7. 転職されるリスクはありますか?
A. はい、転職リスクはあります。特定技能外国人は、同じ分野内であれば自由に転職できます。
転職を防ぐためには、適正な報酬(日本人と同等以上)、良好な職場環境の整備、きめ細かいコミュニケーション、キャリアアップの機会提供(介護福祉士取得支援等)などが有効です。
Q8. 介護福祉士を取得したら在留資格は変わりますか?
A. 在留資格「介護」への変更が可能です。在留資格「介護」は、在留期間の制限がなく、家族の帯同も可能になります。特定技能で受け入れた外国人に介護福祉士を取得してもらうことで、長期的に雇用することができます。
第10章:まとめ|行政書士への相談をおすすめするケース
特定技能「介護」のポイントまとめ
【特定技能「介護」の重要ポイント】
- ✓ 2025年4月から訪問介護も対象に(条件付き)
- ✓ 配属後すぐに人員配置基準に算入可能
- ✓ 1人体制での夜勤が可能
- ✓ 在留期間は最長5年(介護福祉士取得で永続可能)
- ✓ 受入れ人数は常勤職員数まで
- ✓ 協議会への加入が必須(申請前)
- ✓ 支援計画の作成・実施が義務(登録支援機関へ委託可能)
- ✓ 技能実習より自由度が高く、即戦力として活用可能
- ✓ 転職リスクがあるため、良好な職場環境の整備が重要
行政書士への相談をおすすめするケース
特定技能「介護」の申請は複雑で、多くの書類が必要です。以下のようなケースでは、行政書士に相談・依頼することをおすすめします。
行政書士への相談をおすすめするケース
- 初めて特定技能外国人を受け入れる場合
- 申請書類の作成方法がわからない場合
- 外国人が理解できる言語での契約書作成が必要な場合
- 受入れ要件を満たしているか不安な場合
- 過去に不許可になったことがある場合
- スムーズに申請を進めたい場合
- 協議会への加入や登録支援機関の選定など、トータルでサポートしてほしい場合
- 本業に集中したい場合(申請業務を任せたい)
おわりに
特定技能「介護」は、介護業界の深刻な人手不足を解消するための有効な制度です。2025年4月からは訪問介護も対象となり、活用の幅がさらに広がりました。
ただし、申請手続きは複雑で、多くの書類が必要です。また、協議会への加入や支援計画の作成など、事前準備も重要です。
確実に許可を得るため、そしてスムーズに受入れを進めるために、入管申請の専門家である行政書士にご相談されることをおすすめします。