【2025年最新版】飲食料品製造業 特定技能完全ガイド|要件・必要書類・登録支援機関・行政書士への依頼まで徹底解説
飲食料品製造業界における深刻な人手不足は、多くの企業にとって喫緊の課題となっています。農林水産省によると、この分野での特定技能外国人の受入れ見込み数は、5年間で最大139,000人と設定されており、これは産業界全体の中でも特に大きな規模です。
本記事では、2025年時点での最新情報を基に、「飲食料品製造業」における特定技能1号の受入れ要件、複雑な必要書類、登録支援機関への委託メリット・デメリット、そして行政書士への依頼費用まで、実務担当者が知るべき情報を網羅的に解説します。制度を正しく理解し、安定的かつ適法な外国人材の受入れを実現するための手引きとしてご活用ください。
1. 飲食料品製造業 特定技能1号の基本要件
特定技能制度を活用するためには、まず対象となる業務範囲や求められるスキル要件を正確に把握する必要があります。
特定技能1号・2号の違い
特定技能には「1号」と「2号」の2種類があります。
- 特定技能1号:相当程度の知識または経験を必要とする技能を要する業務に従事する在留資格。在留期間は通算5年まで。家族帯同は認められません。
- 特定技能2号:熟練した技能を要する業務に従事する在留資格。在留期間の上限はなく、要件を満たせば家族帯同も可能です。飲食料品製造業分野でも2号の受入れが開始されています。
従事できる業務内容
飲食料品製造業分野(特定技能1号)で従事可能な業務は以下の通りです。
- 飲食料品製造業全般:飲食料品(酒類を除く)の製造・加工、安全衛生
※これに関連する業務として、原料の調達・受入れ、製品の包装、保管、清掃などの業務にも付随的に従事することが可能です。
技能水準と日本語能力の要件
特定技能1号を取得するためには、以下の2つの試験に合格する必要があります。
1. 技能水準の要件
「飲食料品製造業特定技能1号技能測定試験」への合格が必要です。
2. 日本語能力の要件
以下のいずれかの試験への合格が必要です。
- 「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)」
- 「日本語能力試験(JLPT)N4以上」
技能実習2号からの移行(試験免除)
飲食料品製造業分野に関連する職種の「技能実習2号」を良好に修了した者は、上記の技能試験および日本語試験が免除されます。これは、即戦力として期待できる最もスムーズなルートです。
【重要ポイント:基本要件まとめ】
- ✓ 対象業務:飲食料品(酒類を除く)の製造・加工全般
- ✓ 試験ルート:技能測定試験 + 日本語試験(N4以上)に合格
- ✓ 移行ルート:関連職種の技能実習2号修了者は試験免除
- ✓ 雇用形態:受入れ機関(企業)との直接雇用契約のみ
2. 必要書類の完全チェックリスト
特定技能の申請書類は多岐にわたり、一つでも不備があると審査が長期化します。以下に主要な書類を整理しました。
特定技能外国人本人が準備する書類
- 在留資格認定証明書交付申請書
- 写真(縦4cm×横3cm)
- パスポートの写し
- 技能測定試験合格証明書の写し(または技能実習2号修了証明書等)
- 日本語試験合格証明書の写し(技能実習2号修了者は不要)
- 健康診断個人票
受入れ機関(企業)が準備する書類
- 特定技能外国人の報酬に関する説明書
- 特定技能雇用契約書の写し
- 雇用条件書の写し
- 雇用の経緯に係る説明書
- 登記事項証明書(法人の場合)
- 役員の住民票の写し(法人の場合)
- 決算文書(貸借対照表、損益計算書)の写し
- 労働保険料等納付証明書
- 社会保険料納付証明書
- 税務署発行の納税証明書(その3等)
食品産業特定技能協議会関連の書類
飲食料品製造業分野特有の必須書類として、以下のいずれかが必要です。
- 食品産業特定技能協議会の構成員であることの証明書
- または、協議会に入会することを誓約する書面(※2024年6月以前の経過措置対応の場合)
※現在は原則として「申請前の協議会加入」が必須となっています。
詳細な最新様式は以下をご確認ください。
特定技能関係の申請・届出様式一覧(出入国在留管理庁)
3. 登録支援機関への委託:メリット・デメリット・費用相場
特定技能1号外国人を受け入れる際、企業は法律で定められた「支援計画」を実施する義務があります。この支援業務を外部の専門機関である「登録支援機関」に委託するか、自社で行うかの判断が重要です。
登録支援機関とは
受入れ機関(企業)に代わって、特定技能外国人に対する支援計画の作成・実施を行う機関として、出入国在留管理庁長官の登録を受けた法人や個人です。
委託する5つのメリット
- 専門的な支援体制の確保:法令で定められた複雑な支援(事前ガイダンス、生活オリエンテーション等)をプロに任せられます。
- 事務負担の大幅軽減:定期的な面談や報告書の作成・提出といった煩雑な業務から解放されます。
- 法令遵守(コンプライアンス)の徹底:制度変更や法改正に即座に対応できます。
- 多言語対応:緊急時の対応や相談対応において、通訳・翻訳の体制が整っています。
- トラブル対応:外国人材との間に行政・生活面でのトラブルが発生した際、仲介役として機能します。
委託する際の3つのデメリット
- コストの発生:毎月、委託費用が発生します。
- コミュニケーションの希薄化:支援を丸投げすると、企業と外国人材との距離が遠くなるリスクがあります。
- 機関の質のばらつき:登録支援機関によってサービスの質や対応速度に差があります。
費用の詳細
登録支援機関へ委託する場合、費用は全額受入れ企業が負担しなければなりません。
| 費目 | 相場 | 備考 |
|---|---|---|
| 初期費用 (人材紹介料含む場合あり) |
20万円〜80万円 | 人材紹介会社を兼ねている場合、紹介料として年収の20〜30%程度がかかることが一般的です。支援委託のみの初期費用は数万円〜10万円程度です。 |
| 月額支援委託費 | 15,000円〜30,000円 (1名あたり) |
平均額は約28,386円と言われています。人数が増えると割引がある場合もあります。 |
【費用シミュレーション例:3名受入れの場合】月額委託費: 25,000円 × 3名 = 75,000円/月
※これに加え、別途初期費用や、入国時の渡航費等の負担が必要です。
4. 行政書士への申請取次依頼:メリットと費用相場
在留資格(ビザ)の申請手続きは、専門知識を持つ「申請取次行政書士」に依頼するのが一般的です。
行政書士に依頼する4つのメリット
- 入管への出頭免除:申請人本人や企業の担当者が入管へ行く必要がなくなり、業務に専念できます。
- 書類作成の正確性:複雑な要件を精査し、不備のない書類を作成します。
- 不許可リスクの低減:過去の事例や審査基準に基づき、許可される可能性を高めるための書類構成や理由書作成を行います。
- 最新法令への対応:頻繁に変更される運用要領や提出書類のルールに即座に対応します。
費用相場
| 申請種類 | 費用相場(1名あたり) |
|---|---|
| 在留資格認定証明書交付申請 (海外から呼び寄せる場合) |
150,000円 前後 |
| 在留資格変更許可申請 (国内の留学生や実習生からの変更) |
100,000円 〜 150,000円 |
| 在留期間更新許可申請 (1年ごとの更新時) |
80,000円 〜 120,000円 |
行政書士と登録支援機関の違い
| 項目 | 申請取次行政書士 | 登録支援機関 |
|---|---|---|
| 主な役割 | 在留資格(ビザ)申請の代行 | 受入れ後の生活・職業支援の実施 |
| 業務の時期 | 入国前・更新時・変更時(スポット) | 在留期間中ずっと(継続的) |
| 費用の性質 | 申請ごとの報酬 | 月額の委託料 |
※行政書士事務所が登録支援機関を兼ねているケースも多くあります。
5. 食品産業特定技能協議会への加入手続き【必須】
飲食料品製造業で特定技能外国人を受け入れるためには、「食品産業特定技能協議会」への加入が義務付けられています。
2024年6月14日からの重要な変更点
従来は「受入れ後4ヶ月以内」の加入でも認められていましたが、2024年6月14日以降、特定技能外国人の在留諸申請を行う前に、協議会の構成員であることが必須要件となりました。つまり、加入手続きが完了していないと、ビザの申請ができません。
加入申請の流れ(5ステップ)
農林水産省指定の加入申請フォームから基本情報を入力します。
事務局からのメール指示に従い、誓約書や営業許可証などの必要書類を提出します。
審査には通常1〜2ヶ月程度かかります。
審査完了後、加入証(構成員であることの証明書)が発行されます。
発行された証明書を添付して、入国管理局へ在留資格の申請を行います。
参考リンク
6. 申請から受入れまでの完全フロー
国内外から候補者を募集し、面接を行います。
「技能測定試験」および「日本語試験」の合格証を確認します(技能実習2号修了者は免除証明)。
雇用契約を結び、事前ガイダンス(登録支援機関へ委託可)を実施します。
農林水産省へ申請。審査に1〜2ヶ月要するため、早期着手が必須です。
入国管理局へ申請。審査期間は1〜3ヶ月程度。
在外公館でビザを取得し、来日。
生活オリエンテーション等を実施し、業務開始。
7. よくある質問(FAQ)10選
Q1: 技能実習2号からの移行は試験免除ですか?
A1: はい。飲食料品製造業分野に関連する職種・作業の技能実習2号を良好に修了している場合、技能試験と日本語試験の両方が免除されます。
Q2: 在留期間は何年ですか?更新は可能ですか?
A2: 在留期間は「1年」「6ヶ月」「4ヶ月」のいずれかが付与され、更新することで通算最大5年まで在留可能です。
Q3: 転職は可能ですか?
A3: はい、可能です。ただし、同一の業務区分内(飲食料品製造業)であるか、試験等で技能水準を確認した別の分野である必要があります。
Q4: 登録支援機関は途中で変更できますか?
A4: 可能です。ただし、支援の継続性に配慮し、変更の手続きを速やかに行う必要があります。
Q5: 自社支援と委託、どちらが良いですか?
A5: 自社に外国語対応可能なスタッフがおり、法令知識が十分であれば自社支援でコスト削減が可能です。そうでない場合は、リスク回避のために登録支援機関への委託を推奨します。
Q6: 協議会加入にかかる期間は?
A6: 申請から加入証発行まで、現在1〜2ヶ月程度かかっています。計画的な申請が必要です。
Q7: 営業許可証が必要な理由は?
A7: 協議会加入審査において、受入れ企業が適法に飲食料品製造業を営んでいるかを確認するためです。
Q8: 特定技能2号への移行条件は?
A8: 2号試験への合格と、実務経験(管理監督者としての経験など)の要件を満たす必要があります。
Q9: 日本語試験の合格率は?
A9: JLPT N4の合格率は実施回によりますが概ね30〜45%程度です。
Q10: 申請が不許可になる主な理由は?
A10: 書類の不備・整合性の欠如、企業の社会保険未加入、過去の労働法令違反、外国人の過去の在留不良(オーバーワーク等)などが挙げられます。
8. 成功する受入れのための5つのポイント
- 早めの準備開始:特に協議会加入手続きには時間がかかります。採用決定から入社まで4〜6ヶ月かかることを見込んで計画を立てましょう。
- 専門家の活用:行政書士や登録支援機関などの専門家を適切に活用することで、コンプライアンスリスクを回避できます。
- 適切な支援計画の作成:形式的な支援ではなく、外国人が安心して働ける実質的な支援計画を策定・実施しましょう。
- 継続的なコミュニケーション:文化的な摩擦を防ぐため、日本人従業員への教育も含めた相互理解の場を設けることが重要です。
- 法令遵守の徹底:労働基準法はもちろん、入管法に基づく届出義務を怠らないことが、安定した受入れ継続の条件です。
まとめ
飲食料品製造業における特定技能1号制度は、人手不足解消の切り札として極めて有効な手段です。しかし、その手続きは複雑で、求められるコンプライアンス水準も高いのが現状です。
特に、2024年から厳格化された協議会への事前加入ルールや、各種支援業務の実施には細心の注意が必要です。自社だけで全て完結しようとせず、信頼できる登録支援機関や特定技能に精通した行政書士と連携を取りながら進めることが、成功への近道と言えるでしょう。
最新の公式情報は、必ず以下の省庁サイトで確認するようにしてください。