建設業許可

建設業の専任技術者を変更する時の手続きについて解説

建設業許可を取得した後は、毎年行う決算変更届の手続きや、5年ごとの更新等の手続きを行う必要があります。

しかし、建設業許可を取得した後、様々な事情によって当初許可を取得するために行政に提出していた事項と異なるケースは多々発生します。

例えば、専任技術者として在籍していた社員が退職する等によって、新しく専任技術者を選任する必要がでてくるようなことが起こり得ます。

そこで、今回は専任技術者を変更する時の手続きについて解説をしていきます。

建設業許可については、以下の記事でも詳しく解説しているので参考にしてください。↓

専任技術者とは


建設工事に関する請負契約の適正な締結、履行を確保するためには、許可を受けようとする建設業に係る工事についての専門的な知識が必要になります。

また、見積、入札、請負契約締結等の建設業に関する営業は各営業所で行われます。

そのため、上記のことを考慮し、営業所ごとに許可を受けようとする建設業に関して、一定の資格または経験を有した者を設置することが求められています。

この一定の資格または経験を有した者を「専任技術者」言います。

専任技術者については、以下の記事でも詳しく解説をしていますので参考にしてください。↓

また、国土交通省のホームページでも専任技術者について掲載されています。↓
国土交通省ホームページ

専任技術者の変更の届出は14日以内に


専任技術者の変更の届出は、変更が発生した日から14日以内に行う必要があります。

変更届書自体の作成自体はそこまで難しくありませんが、専任技術者の条件(例えば10年の実務経験の有無等)を疎明するための資料を整えるのに時間がかかることが多いので、余裕をもって準備を進めていく必要があります。

専任技術者の変更に該当するケースは?


例えばどのようなケースで専任技術者の変更になるのか?ということですが、以下の事由が生じた場合は必ず専任技術者の変更届が必要です。

・専任技術者の欠員(退職・死亡等)
・専任技術者の追加(交代や営業所を新設する等)
・専任技術者が所属する営業所の変更
・専任技術者の氏名の変更
・専任技術者の担当業種、有資格区分の変更

等が発生した場合は、必ず14日以内に専任技術者の変更届を行う必要があります。

専任技術者の変更届を提出しない場合は?


専任技術者に変更があった場合は14日以内に変更届を提出する必要があることは上述した通りです。

そのため、専任技術者の変更があったにもかかわらず14日以内に変更届を提出しない場合は建設業法違反となります。

具体的な根拠は、建設業法第11条に規定されています。

建設業法第11条

・許可に係る建設業者は、営業所に置く第七条第二号イ、ロ又はハに該当する者として証明された者が当該営業所に置かれなくなつた場合又は同号ハに該当しなくなつた場合において、これに代わるべき者があるときは、国土交通省令の定めるところにより、二週間以内に、その者について、第六条第一項第五号に掲げる書面を国土交通大臣又は都道府県知事に提出しなければならない。

建設業法第11条から一部抜粋>

上記の通り、建設業法上の義務を履行しない場合は当然罰則(建設業法第50条等)を受けることになり、許可の取り消しや罰金等を受ける可能性があります。
また、適切な届出をしていないことで、建設業許可の更新、業種追加、経営事項審査を受け付けてもらえないことになります。

建設業を行う上で、許可の更新等ができなくなると大きな影響を受けることになるので、変更届が必要な手続きが発生した場合は、必ず適切に処理をしておくことを忘れないようにしなければなりません。

専任技術者の変更届に必要な書類について


下記のケースが発生した場合は、専任技術者の変更届が必要であることは上述しました。

・専任技術者の欠員(退職・死亡等)
・専任技術者の追加(交代や営業所を新設する等)
・専任技術者が所属する営業所の変更
・専任技術者の氏名の変更
・専任技術者の担当業種、有資格区分の変更

以下、よく発生する専任技術者の欠員(退職・死亡等)し、新たに専任技術者の選任(追加)した場合の必要書類等を考えていきたいと思います。

専任技術者の欠員(退職・死亡等)し、新たに選任(追加)した場合

専任技術者の欠員が発生した場合は、新しく専任技術者を追加する必要があります。
このケースでは

・変更届出書(参考:変更届出書
・専任技術者一覧表(参考:専任技術者一覧表
・専任技術者証明書(参考:専任技術者証明書

等の書類を提出する必要があります。

また、確認書類として、

・常勤性の確認書類
・専任技術者の要件確認資料

等が必要になります。

常勤性の確認書類とは

常勤性の確認書類とは、確かに設置した専任技術者が許可業者の営業所で勤務しているということを証明する書類です。
具体的には、以下のような書類が必要になります。

専任技術者が法人の役員又は従業員の場合

以下、①又は②の書類が必要です。

①健康保険被保険者証(申請時において有効なもの)+健康保険被保険者標準報酬決定通知書(直近年のもの)
※健康保険被保険者証が事業所名のない建設国保等の場合は、別途建設国保等の加入証明書も必要です。
②住民税特別徴収税額通知書(特別徴収義務者用)+住民税特別徴収税額通知書(納税義務者用)
※双方とも直近年のものが必要です。
専任技術者がが個人事業主の場合
・国民健康保険被保険者証(申請時において有効なもの)
専任技術者が個人事業の専従者の場合

以下、①及び②の書類が必要です。

①国民健康保険被保険者証(申請時において有効なもの)
②直前の個人事業主の所得税の確定申告書(税務署の受付印のある第一表+事業専従者欄又は給料賃金の内訳欄に氏名・金額の記載がある書類)
専任技術者が個人事業の従業員の場合

以下、①又は②の書類が必要です。

①健康保険被保険者証(申請時において有効なもの)+健康保険被保険者標準報酬決定通知書(直近年のもの)
※健康保険被保険者証が事業所名のない建設国保等の場合は、別途建設国保等の加入証明書も必要です。
②住民税特別徴収税額通知書(特別徴収義務者用)+住民税特別徴収税額通知書(納税義務者用)
※双方とも直近年のものが必要です。

上記の書類を専任技術者の状況に併せて準備する必要があります。

なお、後期高齢者の場合は、別途書類が必要になる可能性があるので注意が必要です。

まとめると、以下の書類を状況に併せて準備することが求められます。

<参照:大阪府 建設業許可の手引きより一部抜粋>

専任技術者の要件の確認資料とは

専任技術者は誰でもなれるという訳ではありません。
そのため、専任技術者になるための要件を満たしていることを疎明する必要があります。(10年以上の実務経験や国家資格取得者等)

そのため、状況に応じて、以下の書類が必要になります。

・実務経験証明書(参考:実務経験証明書
・卒業証書の写し又は卒業証明書の原本
・国家資格等の資格を証する書面の写し
・監理技術者資格者証の写し
・指導監督的実務経験証明書(参考:指導監督的実務経験証明書
・登録解体工事講習修了証の写し(解体工事業の専任技術者で講習を修了している場合)

等の書類を状況に応じて揃える必要があります。

実務経験の証明について


国家資格や学歴等で専任技術者の証明が難しい場合、多くの建設業者の方は10年の実務経験で専任技術者の該当性を証明することになります。

この10年の実務経験の証明には以下の資料が必要です。

建設業許可を受けていた建設会社で勤務していた場合

・建設業許可申請書の一部
・変更届の一部
・決算変更届の一部

等の資料を提出することで、専任技術者の要件を満たしていることを疎明します。

建設業許可を受けていない建設会社で勤務していた場合

・申請業種の工事の契約書、注文書、請求書、内訳書等

等の書類を提出することで、専任技術者の要件をみたしていることを疎明します。

なお、当然、工期、工事名、工事内容、請負金額等が確認できることが必要です。

実務経験証明書については、以下の記事で詳しく解説をしています。↓

変更届出書の記入例


変更届出書の記入例については以下をご確認ください。↓

<参照:大阪府 建設業許可の手引きより一部抜粋>

まとめ


今回は専任技術者の変更についての手続きについて考えてきました。
専任技術者の変更が発生した場合は、14日以内に変更の手続きをする必要があります。

この手続きをしなかった場合、許可が取り消される可能性もあるので、忘れずに手続きを行わなければなりません。

その他、常勤役員等(経営業務の管理責任者)の変更があった場合も14日以内に手続きが必要です。

また、毎事業年度終了後4か月以内に決算変更届という手続きも発生します。

建設業許可は、取得してから維持をしていくにも様々な手続きが発生し、複雑です。

そのため、法務の専門家である行政書士に相談できる環境があれば、適切な助言及び手続きを行ってくれますので、建設業許可の取得や取得後の手続きについてお困りの場合は、ぜひ一度相談してみてください。

今回の記事が建設業者の方の参考になれば幸いです。

決算変更届については、以下の記事で詳しく解説をしています。↓

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