建設業許可を取得するにあたっての人的要件として、経営業務の管理責任者(常勤役員等)が必ず在籍していることが必要になります。
建設業を行っている会社だけで代表取締役等の役員になっている場合は問題ありませんが、例えば、他社の取締役等に就任しているケースも考えられます。
このような場合、兼務しているということで建設業許可を取得したい法人の経営業務の管理責任者(常勤役員等)の常勤性が認められず、建設業許可を取得することができないのでしょうか。
今回は、建設業許可を取得したい法人の経営業務の管理責任者(常勤役員等)が、非常勤で他社の役員等に就任している場合の許可取得について考えていきたいと思います。
建設業許可の取得を検討している事業者の方の参考になれば幸いです。
一般的な建設業許可については、以下の記事で解説をしています。↓
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※なお、今回のケースは大阪での建設業許可取得を想定しているため、他の都道府県との運用が異なる可能性があります。他の都道府県で建設業許可を取得したい場合は、別途、当行政書士法人にご相談ください。
経営業務の管理責任者(常勤役員等)には常勤性が必要
一般的に建設業許可を取得するためには、経営業務の管理責任者(常勤役員等)が当該法人で常勤している必要があります。
これは、建設業法施行規則第7条を根拠に常勤性が求められています。
例えば、建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者等が常勤していることが必要です。
経営業務の管理責任者については、以下の記事でも詳しく解説しているので参考にしてください。↓
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他社の役員(取締役等)にも就任している場合
建設業許可取得において経営業務の管理責任者(常勤役員等)の条件を満たす役員が他の会社の役員にも就任しているケースで当社に相談されることもあります。
上述したとおり、経営業務の管理責任者(常勤役員等)には常勤性が求められるため、通常、他の会社の役員等を兼務している場合には常勤性が認められず、要件を満たすことができません。
しかし、他の会社の役員として非常勤であれば、建設業許可を取得したい法人での常勤性が認められ、許可が取得できるケースがあります。
非常勤でないことを証明する必要がある
他の会社の役員と兼務している場合、他の会社としての勤務が非常勤であれば許可取得の可能性があるということは上述したとおりです。
ただし、当然、非常勤であることを証明していく必要があります。
このようなケースは複雑であるため、個別具体的な疎明資料が必要になりますが、一般的に疎明資料として使用するものは以下のとおりです。
健康保険証
当然、役員として勤務している場合、社会保険に加入していることが一般的です。
通常、非常勤のケースでは、社会保険の加入(健康保険証の名前)が常勤で役員をしている会社になっているはずです。
そのため、許可を取得したい会社名義になっている健康保険証(写し)が必要になります。
つまり、健康保険証が非常勤の会社名義であれば、常勤性を認めてもらうことができません。
健康保険・厚生年金保険被保険者標準報酬決定通知書
例えば、常勤の会社と非常勤の会社の2カ所から役員報酬を受け取っている場合、「二以上事業所勤務被保険者の選択年金事務所届」の手続きを行っていると思います。
例えば、2つの会社で役員報酬を取得している場合は、2つの事業所の標準報酬決定通知書を疎明資料として必要になります。
こちらの手続きについては、「日本年金機構」のホームページにて詳細に記載されています。↓
・日本年金機構ホームページ
ただし、常勤の会社の役員報酬が、非常勤の会社の役員報酬より低い場合等、常勤性に疑義が出るような状態の場合は、常勤性に疑義を持たれるので注意が必要です。
法人の確定申告書
例えば、5年の建設業の経営経験で「経営業務の管理責任者(常勤役員等)」として証明する場合は、少なくとも5年分の会社の確定申告書が必要になります。
そして、常勤・非常勤の区分が決算書内の「役員給与等の内訳書⑭」に記載されています。
そのため、許可を取得したい会社の確定申告書と非常勤の会社の確定申告書が必要になり、さらに上記「役員給与等の内訳書⑭」を添付して、「常勤」「非常勤」であるということを疎明する必要があります。
非常勤証明書
非常勤である会社から「経営業務の管理責任者(常勤役員等)」になる人物が非常勤である旨の証明書を発行してもらう必要があります。
ただし、設立して間もない(決算が1期も終わっていない)会社の非常勤役員になった場合は、上記確定申告書を出すことができないので、非常勤証明書のみで疎明することになります。
まとめ
今回は、建設業許可を取得するにあたり非常勤役員にも就任しているようなケースについて考えてきました。
このようなケースはかなり手続きが複雑になるため、事前準備をしっかり行い、根拠となる資料を提出していくことがとても重要になってきます。
建設業許可を取得するためには、「経営業務の管理責任者(常勤役員等)」以外にも「専任技術者」等の人的要件や財産要件、物の要件等も満たしていることを疎明していく必要があるため、かなり労力が必要になります。
そのため、建設業許可を取得するにあたっては、専門家である行政書士に相談する方法も有効な選択肢です。
今回の記事が建設業許可の取得を検討している事業者の方の参考になれば幸いです。
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