深夜0時を回ってもお酒(種類)を提供するバー等の飲食店を営業するためには、飲食店営業の許可だけではなく深夜酒類提供飲食店営業の届出を行う必要があります。
深夜酒類提供飲食店営業の届出を行わないで、深夜0時を超えてバーの営業を行うことは、当然法令違反になり罰せられることになります。
そこで、今回は深夜酒類提供飲食店営業の届出について解説していきたいと思います。
バーの開業を検討している事業者の方の参考になれば幸いです。
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深夜酒類提供飲食店営業とは
深夜酒類提供飲食店営業とは、「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第33条第1項」の規定が根拠になっています。
上記、「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第33条第1項」では、以下のように規定されています。
第三十三条 酒類提供飲食店営業を深夜において営もうとする者は営業所ごとに、当該営業所の所在地を管轄する公安委員会に、次の事項を記載した届出書を提出しなければならない。
一 氏名又は名称及び住所並びに法人にあつては、その代表者の氏名
二 営業所の名称及び所在地
三 営業所の構造及び設備の概要
つまり、深夜(0時)を超えて、酒類提供飲食店営業(バー等)を営む場合は、店舗ごとにその店舗を住所地を管轄する公安委員会(警察署)に届出をしなければならないということです。
深夜酒類提供飲食店営業は届出or許可?
上述したとおり、深夜酒類提供飲食店営業は届出なので、飲食店営業のように許可とは異なります。
簡単に許可と届出の違いを記載しておきます。
許可とは
「許可」とは、公共の安全や秩序の維持などの公益上の理由から、法令で一般的に禁止されている行為について、特定の場合に限ってその禁止を解除する行政行為のことを指します。
つまり、飲食店営業は、本来誰でも自由にできるはずですが、食中毒等の事件などが発生する場合を考慮し、法令で自由に営業できないようにしています。
しかし、営業許可をとることにより、この禁止を解除することができるようになります。
届出とは
「届出」とは、法令で定められている特定の行為について、一定の事項を予め行政官庁へ通知することを指します。
つまり、「許可」の場合、申請した行政官庁から「許可」や「不許可」の判断を受けますが、「届出」には行政官庁の判断がなく、必要な要件(書類)を満たしてさえいれば、行政官庁に到達することで完了することになります。
深夜酒類提供飲食店営業の届出が不要なケースは?
上述したとおり、原則的に深夜0時を超えて種類(お酒)を提供するお店では、深夜酒類提供飲食店営業の届出を行わなければなりません。
しかし、例外的に深夜0時を超えてお酒を提供したとしても、届出が不要なケースもあります。
例えば、「ファミリーレストラン」や「回転寿司店」等が該当します。
このような店舗では、主として提供するサービスが「食事」となっています。
そのため、お酒を飲むことを目的に来店する客も少ないと考えられているので、「主として提供するサービスが食事」のようなお店では、深夜0時を超えてお酒を提供しても、深夜酒類提供飲食店営業の届出は必要ありません。
つまり言い換えると、深夜酒類提供飲食店営業届は、バーや居酒屋のように、お酒の提供が主となる飲食店を経営する場合に必要な届出になります。
飲食店営業許可を取得していることが必要
深夜酒類提供飲食店営業の届出を行うためには、飲食店営業の許可を取得していることが必要です。
そのため、深夜酒類提供飲食店営業の届出を行う前に、事前に保健所に対して飲食店営業許可の手続きをしておかなければなりません。
飲食店営業許可については以下の記事で詳しく解説をしています。↓
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深夜酒類提供飲食店営業の届出をするための必要書類
深夜酒類提供飲食店営業は届出であるため、必要書類を完璧に整えて提出することで手続きを完了することができます。
深夜酒類提供飲食店営業の届出に必要な書類は以下のとおりです。
①深夜における酒類提供飲食店営業の営業開始届出書
②営業の方法
③営業所の配置状況を記載した図面(座席やテーブル等)
④照明、音響、防音設備を記載した図面
⑤営業所の存在するフロアの平面図
⑥営業所、客室面積の求積図及び求積表
⑦飲食店営業許可証のコピー(ただし、飲食店営業許可申請中の証明書でも可能な場合もあります。)
⑧賃貸借契約書のコピー
⑨建物使用承諾書
⑩営業所付近の見取図
⑪メニュー表
⑫住民票(法人の場合は役員全員分が必要となります。また、住民票には本籍地の記載が必要になります。)
⑬会社定款のコピー(法人の場合に必要になります。)
⑭法人登記事項証明書(法人の場合に必要になります。)
⑮※証明願
⑯その他都道府県の公安委員会が必要とする書類
上記の書類が必要になります。
また、個人で深夜酒類提供飲食店営業の届出を行う場合は、会社の定款や法人登記事項証明書は準備できないため、添付は不要です。
上記書類のうち、代表的な書類について以下で簡単に解説しておきます。
深夜における酒類提供飲食店営業の営業開始届出書
上記①の深夜における酒類提供飲食店営業の営業開始届出書とは、風俗営業法第33条を根拠に届出が必要な届出書になります。
この書類は、大阪府警察でも公表されていますので、以下に掲載しておきます。↓
<参照:大阪府警察ホームページより>
深夜における酒類提供飲食店営業営業開始届については、以下の記事で詳細に解説しています。↓
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営業の方法とは
深夜における酒類提供飲食店営業の届出を行う際には、「営業の方法」という書類の提出も求められます。
こちらの書類には、営業時間等の詳細を記載していきます。
この書類は警視庁のホームページにて公表されていますので、以下に掲載しておきます。↓
<参照:警視庁ホームページより>
証明願とは?
上記⑭の書類に「証明願」があります。
この証明願とは、飲食店許可申請時に、「保健所から確かに飲食店許可申請の手続きを行っている。」ということを証明してもらう書類です。
原則、深夜酒類提供飲食店営業の届出を行うためには、飲食店営業の許可を取得していることが大前提です。
しかし、初めてバーの事業を行うようなケースでは、飲食店許可と深夜酒類提供飲食店営業の届出を同時に行うことが一般的です。
飲食店許可の手続きは、保健所の職員の方の現地調査等があるため、即日許可証を交付ということにはなりません。
そのため、許可を得ていない状態では、通常、酒類提供飲食店営業の届出を行うことができません。
このような、タイムラグを回避するために、事前に保健所から「証明願」を取得しておくことで、飲食店営業の許可はまだ出ていないけれど、手続きはしているということで、深夜酒類提供飲食店営業の届出を受理してもらうことができます。
注意すべき点としては、証明願いはあくまでも、手続きをしているという証明になるため、深夜酒類提供飲食店営業の届出を行った後、飲食店営業の許可証が交付された後は、その許可証の写しを改めて警察署に提出しなければならないので、忘れないようにしなければなりません。
また、「深夜酒類提供飲食店営業の届出」にかかる費用については、以下の記事で詳しく解説をしています。↓
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深夜酒類提供飲食店営業の届出の要件(注意点)
深夜酒類提供飲食店営業(バー等)の運営を始めるにあたって、注意しなければならないことも沢山あります。
そのため、深夜酒類提供飲食店営業を始めることを検討している場合は、以下の注意点も必ず確認しなければなりません。
用途地域は必ず確認すること
深夜酒類提供飲食店営業を開始を検討した際には、必ずその店舗の用途地域を確認することを忘れてはいけません。
例えば、大阪府では「大阪府風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例」によって、以下の地域では深夜酒類提供飲食店営業を行うことができません。
・第一種低層住居専用地域
・第二種低層住居専用地域
・第一種中高層住居専用地域
・第二種中高層住居専用地域
・第一種住居地域
・第二種住居地域
・準住居地域及び田園住居地域
ただし、第一種住居地域、第二種住居地域及び準住居地域のうち公安委員会規則で定める地域を除く。
公安委員会で定める地域とは?
上記の公安委員会で定める地域とは、例えば、以下の地域が該当します。
(1) 別表第1の左欄に掲げる道路の側端からおおむね25メートルの区域のうち、当該道路の区分に応じ、それぞれ同表の右欄に掲げる地域
(2) 別表第2に掲げる鉄道線路の各駅の出入口(一般乗降客が利用するために設けられた駅舎等の出入口をいう。)の周囲おおむね50メートルの区域
上記別表第1とは、以下の地域です。↓
上記別表2とは、以下の地域です。↓
<参照:大阪府風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例より一部抜粋>
用途地域とは
「用途地域」とは「計画的な市街地を形成するために、用途に応じて13地域に分けられたエリア」のことを言います。
大阪市内の用途地域は、大阪市ホームページ内のマップナビ大阪でおおよその用途地域を調べることができます。↓
設備基準等を確認すること
「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行規則」では、深夜酒類提供飲食店営業を行うための設備基準(技術上の基準)等も厳しく規定されています。
そのため、深夜酒類提供飲食店営業の届出を行うためには、以下の基準を満たす必要があります。
①客室の床面積は、1室の床面積を9.5㎡とすること。ただし、客室の数が1室のみである場合は、この限りでない。
②客室の内部に見通しを妨げる設備を設けないこと。
③善良の風俗又は清浄な風俗環境を害するおそれのある写真、広告物、装飾その他の設備を設けないこと。
④客室の出入口に施錠の設備を設けないこと。ただし、営業所外に直接通ずる客室の出入口については、この限りでない。
⑤営業所内の照度が20ルクス以下とならないように維持されるため必要な構造又は設備を有すること。
⑥騒音又は振動の数値が法第32条第2項において準用する法第15条の規定に基づく条例で定める数値に満たないように維持されるため必要な構造又は設備を有すること。
上記の技術上の基準を満たす必要があること。
なお、⑥の騒音等については、大阪府からパンフレットが公表されていますので、参考に以下で掲載をしています。↓
接待行為を行わないこと
酒類提供飲食店営業では、接待行為をすることができません。
ここでいう「接待」とは、歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすことをいう。
また、具体的な接待についての解釈は、「
この解釈基準では、以下に該当するものが接待であるとしています。↓
① 談笑・お酌等
② ショー等
③ 歌唱等
④ダンス
⑤遊戯等
⑥その他(客と身体を密着させたり、手を握る等客の身体に接触する行為)
上記の6つに該当する営業を行う場合は、深夜酒類提供飲食店営業の届出ではなく、風俗営業許可を取得することが必要になります。
詳細な図面が必要
飲食店営業の許可を取得する際にも営業所の平面図が必要になりますが、深夜酒類提供飲食店営業の届出をする時にも平面図等の図面が必要になります。
この図面については、飲食店営業許可申請時には、簡易なもので大丈夫でした。
しかし、深夜酒類提供飲食店営業の届出時に提出する図面には、「営業所・客室求積図」「照明設備・音響設備・防音設備等の配置図」「カウンターや机、いす等の配置図」などを詳細に記載した図面が必要になります。
風俗営業許可と同時に届出をすることはできない
例えば、風俗営業許可を既に取得しているキャバクラが、深夜0時以降はバー営業をするため、深夜酒類提供飲食店営業の届出を警察署にしたとしても、原則受理してもらえません。
理由としては、一般的に、風俗営業と深夜酒類提供飲食店営業は並行して行うことが、物理的には難しいという理由です。
そのため、理論上は可能ですが、実務的には風俗営業許可と深夜酒類提供飲食店営業の届出は併存することができないということになります。
警察署によってはローカルルールがあることも
古物商許可もそうですが、警察署に対して行う許可(届出)は、その警察署で独自のルール(ローカルルール)が存在することもしばしばあります。
そのため、行政手続きに慣れていない方が、深夜酒類提供飲食店営業の届出を行うと、結局何をどのように提出したらよいかわからなくなり、混乱してしまうケースも多々あります。
そのため、深夜酒類提供飲食店営業の届出を行う際には、事前に提出先の警察署に確認をしておくことが必要です。
深夜酒類提供飲食店営業はいつまでに届出る必要がある?
深夜酒類提供飲食店営業の届出は、その営業を開始する10日前までに、店舗の所在地を管轄する警察署(公安委員会)に届出を行わなければなりません。
また、届出の時の注意店として、事前に届出先の警察署に電話で連絡を入れ、届出の日を予め予約しておく必要があります。
当日、アポなしで行っても対応してくれる可能性もありますが、別の予約が入っていたり、急な事件等で担当者がいない。等のケースがありますので、事前予約は必ずいれるようにしておくと、スムーズに届出を行うことができます。
営業内容に変更があれば変更届が必要
深夜酒類提供飲食店営業の届出を行い、営業を開始した後に、届出者の住所、図面の変更、営業所の名称等が変更された場合、10日以内にに変更届を届出先の警察署に対して行わなければなりません。
まとめ
今回は、酒類提供飲食店営業の届出について考えてきました。
深夜酒類提供飲食店営業の届出には、飲食店許可もセットで手続きを行う必要があるため、かなり煩雑な手続きになります。
また、警察署への手続きに慣れていない場合は、届出までに時間がかかり、営業開始日が遅くなってしまうこともあります。
そのため、深夜酒類提供飲食店営業の届出や飲食店営業許可については、専門家である行政書士に相談する方法も有効な選択肢の1つですので、効率的に手続きを進めたいという方は、ぜひ一度相談してみてください。
今回の記事がバー等の飲食店開業を検討している方の参考になれば幸いです。
飲食店営業の許可については、当事務所が運営している別サイトで詳細を解説しています。↓